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本草という「漁網」と根本への回帰

本草学の最初の危険は、薬物の数が増えたことをそのまま知恵の増加とみなすことである。本草篇の冒頭では、歴代の本草が収載範囲を広げてきた傾向を「投げ広げた漁網」にたとえる。十万にも及ぶ薬物、別名、産地、効能、症状の情報は膨大だが、全体を収束させる第一原理がなければ、情報が増えるほど医者は中心軸を失いやすい。

本草という「漁網」と根本への回帰の図
膨大な本草情報を漁網のように広げるだけでなく、第一原理で再び収束させる必要がある。

本篇の核心は、本草を「データベース」からもう一度「推演の学」へ戻すことにある。薬物は孤立した項目ではなく、天地の時空、陰陽五行、三陰三陽と人体というブラックボックスが相互作用した結果である。薬名と効能だけを追えば相関の積み重ねになるが、なぜこの性・味・形・作用をもつのかを問うことで、はじめて因果の鎖へ戻れる。

薬物篇は四層に分かれる。第一に黄宮繡『本草求真』から古人が本草をどのように記号化して収束させたかを見る。第二に朱進忠の臨床用薬経験から選薬と時空モデルの対応を見る。第三に『神農本草経』を読み解く総綱を組み立てる。第四に張志聡らの解釈を通して、『内経』の規則で一味一味を貫く方法を検証する。