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甬・宮・商・角・徴・羽・穌――人体音声の七層尺度

古代医学の「音」と聞けば、宮・商・角・徴・羽と五行の配属をまず思い浮かべやすい。しかし『扁鵲鏡経』の記述はより数理的で、先に「準」を置き、比例によって異なる音度を生成する。

本文はいう。

権衡規矩準は音を度る器である。稟音の半分が準である。

続いて、

準を開七方して甬の度、準を再乗して開七方して宮の度、準を三乗して開七方して商の度、宮×宮が角、宮×商が徴、商×商が羽、商×角が穌の度。

と列挙する。

現存本文の「開方」「乗」を数学的にどう復元するかは版本校勘が必要だが、構造は明白である。各音は恣意的な名称ではなく、一つの基準から比例演算で生成される。

本文は「稟音之半乃準」とする。個人の稟音から基本尺度を取り、それを他の音度を推導する参照にする。

第一輯の「平人一息」とよく似ている。

  • 時間には一息。
  • 空間には骨度比尺。
  • 音の尺度には準。

基準がなければ高低も偏差も語れない。

なぜ五音以外に甬と穌があるのか

Section titled “なぜ五音以外に甬と穌があるのか”

『鏡経』は五音だけでなく、甬・宮・商・角・徴・羽・穌の七類を列挙する。

二つの追加音にも説明があり、甬は夜寐の徐息の気と関わり、穌は「離経津気之音」と呼ばれる。つまり古楽理をそのまま医学へ移したのではなく、異なる生理状態を覆うために拡張した音系である可能性がある。

まず七音を『鏡経』固有の基礎音類座標として捉え、その後で古楽律との関係を検討する方がよい。

音度の目的は音楽鑑賞ではない

Section titled “音度の目的は音楽鑑賞ではない”

本文はいう。

権衡は候舍司応、規矩は音律化度であり、いずれも準音・明息の法である。

つまり音度は最後に候、舍、息、経絡気化へ接続される。歌が正しいかどうかを判定するためではなく、音声を気化差の判読道具にするためである。

同じ宮音でもすべて同じ状態とは限らない。次に『鏡経』は各音を十段階――正、少、衆、開、判、質、虞、加、太、上――へ分ける。

七音は「どの類か」を答え、十分度は「その類の中のどこか」を答える。

次篇ではこの一音十分の高解像度構造を読む。