天干と五行による時間の双方向制御モデル
もう一つの五味モデルは「天干配五行の時間モデル」である。空間的な親和性ではなく、天時・天体周期が万物の変動へ及ぼす調節に焦点を当てる。十天干を甲乙木、丙丁火、戊己土、庚辛金、壬癸水の五組へ折り畳み、時間と五味の**双方向制御(Dual-Control)**を考える。
双方向には二つある。
順方向(天時→植物):特定の年や天干時段における三陰三陽・五行の時間的背景が、その年の植物・花果の内部成分や味の集団的偏りへ関わるという仮説。
逆方向(薬味→人体気機):人が特定の味の薬物を選んで用いることで、天時の偏りに伴う人体の気機変動を反対方向へ調整するという治法モデル。
五行相生の時間循環では二つの天干が一行を担う。たとえば甲乙の年・日では木が時間軸上の主題になる。本篇では『素問・至真要大論』の多くの治法をこの双方向モデルで検討し、火気が過度なとき鹹味など特定の時間モデル上の機能を用いて負帰還のように均衡へ戻す、という読み方を提示する。これは経方の時機選択と「味で気を調える」仕組みを説明する研究モデルである。