緩・急・収・散と「五苦」の時間介入モデル
時間モデルには補位・瀉位だけでなく、より複雑な急性病理へ対応する特殊な介入機構がある。本篇では緩・急・収・散などの生理特性に基づく「五苦時間介入モデル」として整理する。五臓が急性の天時邪気を受けた際の偏りを捕捉し、速やかに方向修正する機能である。
『臓気法時論』は「肝苦急、急食甘以緩之……心苦緩、急食酸以収之」と簡潔に述べる。「甘を急食して緩める」「酸を急食して収める」という語は、味が単なる感覚でなく、緩・収など明確な方向をもつ気化演算子として使われていることを示す。
本篇は、芍薬甘草湯など後世の方剤で甘・酸などの組合せが筋痙攣や腹痛へ用いられることを例に、こうした機能動詞が処方設計を読む手がかりになりうると考える。ただし、現代的な「動的システム工学」という表現は理解のためのモデル比喩であり、古典そのものの用語ではない。