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古人の「音の高下」は高さだけではない――十分度は何を測るのか

「一音十分」を古代の声楽音階としてだけ読むと、『扁鵲鏡経』の用途を狭めてしまう。

正・少・衆・開・判・質・虞・加・太・上を列べた後、本文はこう述べる。

諸音の十気は、いずれも音声の枢、権衡の器、気化の使である。音律がどのように稟受され往来するかを知れば、経絡気化の盛衰、さらに血気の逆順・盈虚を知ることができる。

つまり十分度の最終目標は、経絡気化の盛衰と血気の逆順盈虚を判別することである。

「高下」には少なくとも二層ある

Section titled “「高下」には少なくとも二層ある”

第一層はもちろん、耳で聞ける声の差である。本文も「音之高下」と言う。

しかし第二層では、その声の差を気化状態の指標として使う。声は「鏡」であり、照らしたいのは内部の往来盛衰である。

したがって「上宮」を固定した周波数に直結させたり、「少角」を単一の病名に直結させたりするのは早計である。本文が構築しているのは相対的な分度体系であって、現代周波数表ではない。

同じ分度は異なる五音を横断する

Section titled “同じ分度は異なる五音を横断する”

「少」は少宮・少商・少角・少徴・少羽に現れ、「太」も同じように五音を横断する。

つまり「少/太」は横方向の分度軸、「宮商角徴羽」は別の分類軸である。

行列として書けば、

分度宮商角徴羽
少少宮少商少角少徴少羽
太太宮太商太角太徴太羽

となり、他の分度も同じである。

この構造が次の「二音合度」の基礎になる。

少角と判定するだけなら、まだ一つの状態しか見ていない。しかし人体気化は単変量ではなく、複数経脈、左右位置、複数音が同時に現れる。

そこで『鏡経』は単音名を増やすのではなく、二つの音が出会ったとき、その関係をどう符号化するかを問う。

答えが安・孚・躬・彁・執・淩・解・変・随・盉という「気化十音」である。

十分度の重要性は、音声を五類ラベルから、階層と関係をもち組み合わせ可能な状態空間へ変える点にある。

次篇では、この十の難解な名称がどこから生まれたのかを見る。