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七十二舍と七十三舍――位置と運動を分ける「一」の差

〈八舍〉の大量列挙の後、一つ多い「七十三舍」が現れる。

本文は例として、

謙帰、判躬黄鐘、左手厥陰勝於左足太陰、乃謙帰気行七十三舍也。

とし、

七十三舍とは、差移して復し、気が布かれて行くものであり、交節の気が復会の所へ行くことである。

と説明する。

最後に、

七十二舍は気之立、七十三舍は気之行。

とまとめる。

「なぜ一舍増えるのか」と数だけで考えると本質を外す。

本文は役割を分ける。

  • 七十二舍:気之立。
  • 七十三舍:気之行。

前者は定位された状態、後者は状態が移動した後の運行に重点がある。

七十三舍は新しい固定位置の追加ではなく、「差移而復」で定義される。

気が元の舍位からずれ、運動を経て復会の所へ入る。つまり遷移イベントを表す。

現代的なモデルの比喩なら、七十二舍を state、七十三舍を transition に近いものと考えられるが、原文自身の語は「立」と「行」である。

なぜ六十首は「舍分之始」なのか

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同じ段落に、

六十首者、舍分之始也。

とある。

六十首は終点ではない。首を立て初期状態を定め、そこから舍分へ進む。舍が差移すれば「立」から「行」へ変わる。

完全な鎖は、

音律合気 → 立首 → 定舍 → 差移 → 復会 → 再び行を観る。

病理が静的な位置だけなら七十二舍で足りる。しかし七十三舍を立てるのは、気化が状態から状態へどう移るかを重視するからである。

順逆六十首、後の奇恒揆度と一貫している。診断は「今どこか」だけでなく、どこへ変わっているかを見る。

次篇では「謙帰黄鐘」を具体例に、九気、十音、十二律、経脈配対、三焦、募原、衝任督蹺を一本の気化鎖へまとめる。