感情にも「合成効果」がある――十五種の五志之化
〈通天〉は十五種味化の直後、同じ方法を情志へ適用する。
本文はいう。
喜怒は端に化し、喜悲は柔、喜思は悦、喜恐は斂、喜驚は揚。怒悲は急、怒思は躁、怒恐は暴、怒驚は乱。悲思は哀、悲恐は餒、悲驚は散。思恐は怨、思驚は鬱、恐驚は畏に化す。
各情緒を一つの臓へ貼るのではなく、二つの情志が同時にあると全体状態がどこへ変わるかを問う。
情志は動的変数
Section titled “情志は動的変数”「怒」は一つの結果へ固定されない。悲と合えば急、思と合えば躁、恐と合えば暴、驚と合えば乱になる。
単一情志は入力の一つにすぎず、人体状態を決めるのは他情志、既存精気、臓腑状態との重なりである。
「怒れば肝を傷る」と一語で終えるより、『鏡経』のモデルは情志の組み合わせ空間に近い。
なぜ情志と五味が同じ章にあるのか
Section titled “なぜ情志と五味が同じ章にあるのか”本文は続けて、
五志五味が和すれば精気は盈ちる。勝すれば気を傷り、兼すれば精を傷り、太過すれば変易し、不及なら並ぶ。
と述べる。
情志と飲食は別々の系ではなく、専勝兼並などの関係を通じて精気へ影響する。
同じ食事でも情志状態が異なれば結果が同じとは限らず、同じ情緒でも精気基盤が異なれば偏移も異なりうる。
情志はさらに臓腑ネットワークへ分布する
Section titled “情志はさらに臓腑ネットワークへ分布する”後文では、精気が心に並べば喜、肺なら悲、肝なら憂、胆なら怒、脳なら驚……とし、脾、胃、腎、胞、三焦、膀胱、小腸、大腸まで広げる。
志を五臓だけの五格へ閉じず、より大きな臓腑ネットワークへ接続している。
十五化を心理診断表にしない
Section titled “十五化を心理診断表にしない”「端・柔・悦・斂・揚……」は『鏡経』の気化記述であり、現代精神医学・心理学の分類へ直接同定できない。
まず古代モデル内の状態遷移標識として理解するのがよい。
次篇ではさらに基礎へ戻り、「精食気、形食味」から形・気・精の相互転化を考える。