「揆度」とは何か――『鏡経』の診断アルゴリズムはここから始まる
ここまでで、息・音・律・首・舍・候・奇恒という多くの道具を作ってきた。
〈揆度〉では、それらが初めて診断手順として整理される。
帰・蔵・生・動・長・育・止・壴・謙は気に差移する。安・孚・躬・彁・執・淩・解・変・随・盉は音に当位する。候はその応を見、舍はその位を定める。音・律・候・舍、これが揆度の道である。
ほとんどアルゴリズムの入力欄そのものである。
九気――何がどの段階へ移っているか
Section titled “九気――何がどの段階へ移っているか”帰・蔵・生・動・長・育・止・壴・謙は、気化の段階と差移を記録する。
十音――現在の合度関係はどうか
Section titled “十音――現在の合度関係はどうか”安・孚・躬・彁・執・淩・解・変・随・盉は、異なる音の合度関係を符号化する。
候――どこで観測するか
Section titled “候――どこで観測するか”候は観測窓であり、脈息変化を直接触れられる位置へ落とす。
舍――真の気交位はどこか
Section titled “舍――真の気交位はどこか”舍はより深い層の経絡交会・状態位置を定める。
律――気行尺度と勝復はどうか
Section titled “律――気行尺度と勝復はどうか”原文は、
音の高下は舍の浅深、律の長短は舍の勝復である。
とする。
したがって揆度は一変数を見るのではなく、状態・位置・尺度・関係を同時に判定する手順である。
病名は最初ではなく最後に近い
Section titled “病名は最初ではなく最後に近い”この体系では、まず「どの気が差移したか」「どの候に現れたか」「どの舍に対応するか」「音律が得位しているか」「勝復はどうか」を問う。
病名はその結果をまとめる一つのラベルにすぎない。
『鏡経』が特殊なのは、診断を経験的な一行脈訣だけでなく、逐層逆推論できる程序として組み立てようとする点にある。
次篇では「当位」と「応位」を区別し、病源と病化の関係を見る。