五臓六腑の機能ネットワーク総論
『内経』では、五臓六腑の機能ネットワークの具体的内容は、主として『素問・陰陽応象大論』『素問・金匱真言論』『素問・宣明五気』『素問・五臓生成』『霊枢・本神』などの篇によって構成される。市販の『黄帝内経』解説書にも、この対応関係を表にしたものは多い。
しかし、この五行/五臓の拡張ネットワークの臨床的価値は、分類そのものにあるのではない。患者から集めた多モーダル情報を分類し、候補となる説明を減らして、病因・病機へ近づくためにある。
古人は、世の中の多様な現象の中にも、何らかの共通するモードや性質によって大きく分類できる群があると洞察した。伝統的な言い方では、「感じてこれに通ずる」ものを同類とする。
こうすると、下に示す十二大類・二十四次元 × 五行/五臓という、本来なら約120種類に散らばる現象を、五つの大きな群へ次元圧縮できる。この圧縮によって、「現在どの群Aが過亢となり、別の群Bを抑えているのか」といった推論が可能になる。
一つの簡潔な仮説が、観察された複数の現象を同時に説明できるとき、それは医師の診断と探偵の推理に共通する核心である。現代の数理的言語では、観察結果から共通原因へ遡る Backward Reasoning(後向き推論) に近い。
一、宇宙時空次元
Section titled “一、宇宙時空次元”次元1|方位・気候軸: 空間方位(東/南/西/北/中)と天時気候(風/熱/燥/寒/湿)。
次元2|気化・生生軸: 気が味を生み、味が臓を生む自然生成の系列。
二、象数・符号次元
Section titled “二、象数・符号次元”次元3|周易卦象軸(在卦): 臓腑と八卦符号の対応。
次元4|天地生成数軸(其数): 河図における天地の生数・成数。
三、官能・職位次元
Section titled “三、官能・職位次元”次元5|十二官機能軸(官職): 生命体系の中で臓腑が担う役割を、官職になぞらえて整理する軸。
四、精神・心理次元
Section titled “四、精神・心理次元”次元6|神・魂・魄・意・志軸(主蔵): 各臓腑が主蔵するとされる精神的/心理生理的側面。
次元7|情志心理反応軸(在志): 各臓腑に対応する情緒傾向。
次元8|認知思考階段軸(知力連鎖): 感知・記憶・思考・熟慮から智慧までの認知発展。
五、解剖・形質次元
Section titled “五、解剖・形質次元”次元9|組織系統所属軸(諸属): 血・脈・筋・肉・気・骨など基礎物質・組織の臓腑所属。
次元10|形体組織構成軸(在体): 各臓腑が主る主要身体構造。
次元11|外候光華軸(其栄): 体表に現れる栄枯盛衰の観察指標。
六、感官・孔竅次元
Section titled “六、感官・孔竅次元”次元12|外在開竅軸(在竅): 臓腑の機能が体表へ通じる感覚器官・孔竅。
七、津液流注次元
Section titled “七、津液流注次元”次元13|体液分泌・転化軸(其液): 臓腑気化によって生じる生理的分泌液・潤沢液。
八、声波・律動次元
Section titled “八、声波・律動次元”次元14|五音階梯周波数軸(在音): 角・徴・宮・商・羽という律動分類。
次元15|発声・発力モード軸(在声): 呼・笑・歌・哭・呻などの発声特徴。
九、色彩・気味次元
Section titled “九、色彩・気味次元”次元16|可視色彩軸(在色): 青・赤・黄・白・黒という体表色沢の対応。
次元17|臭気分化軸(其臭): 臊・焦・香・腥・腐などの臭気特徴。
十、生態・物類次元
Section titled “十、生態・物類次元”次元18|滋味・性味軸(在味): 酸・苦・甘・辛・鹹という味覚・性味。
次元19|五穀・五菜軸(穀/菜): 穀類・蔬菜の五行対応。
次元20|五果・五畜軸(果/畜): 果実・家畜肉の食養対応。
次元21|五虫・生物分類軸(其虫): 毛・羽・倮・介・鱗という自然界の大分類。
十一、臓腑経絡トポロジー次元
Section titled “十一、臓腑経絡トポロジー次元”次元22|表裏臓腑連結軸(合): 陰の臓と陽の腑のネットワーク連結。
次元23|五行生剋制化軸(其主): 臓腑間の制約・所属関係。
十二、病理動態次元
Section titled “十二、病理動態次元”次元24|病候関与・外邪所悪軸(変動/悪/傷/病): 異常な運動反応、病因への感受性、外邪への忌避、および空間的に放散する疼痛・関与経路。