衛気の出入と覚醒・睡眠・防衛リズム
衛気と営気は、同じ一本の経路を並んで走るわけではない。衛気は、昼夜に応じて内外の状態を切り替えるシステムに近い。昼は陽経を二十五周し、夜は陰臓へ入って二十五周する。平旦に陰から陽へ出ると人は目覚め、日暮れに陽から陰へ入ると人は眠る。衛気が陽から陰へうまく入れなければ、不眠が生じる可能性がある。
したがって 「陽に出れば寤め、陰に入れば寐る」 という表現は、睡眠を脳だけの孤立現象ではなく、全身の気機が内外ルートを周期的に切り替える現象として捉えている。
臨床でこのモデルを使うなら柔軟さが必要である。鍵になる外部基準は、その土地の日の出と日没である。一年を通じて日照時間は変化するため、伝統モデル上では衛気の運行時刻や内外への配分も季節によって変わると考えられる。
一年の日照時間を並べてみると、太極曲線のような形が現れる。理由は単純で、地球の太陽公転と、地域ごとの太陽高度・地平線との関係から生じる周期だからである。
衛気理論から考えると、夜の睡眠を乱しやすい行動も分かりやすい。原則は、昼に夜のような生活をせず、夜に昼のような生活をしないことである。コーヒーを飲むなら午前中までにし、昼に長く寝て補眠しすぎず、衛気の運行を地域の日照と同期させる。太陽が沈めば、衛気も徐々に陰へ入ることで、入眠へ移行しやすくなる。エジソンの電灯は偉大な発明だが、人工照明によって人間は、光照と衛気の自然な同期を容易に乱せるようにもなった。
『医学探源』原文の現代語訳
Section titled “『医学探源』原文の現代語訳”「衛気は昼に陽経を二十五周し、夜に陰臓を二十五周する。衛気の運行は通常、平旦寅時に足太陽の睛明から始まる。平旦に陽気が目から出て、目が開けば気は頭へ上る……このように二十五周する。日が沈み陽が尽きると、陰が気を受け、そこで陰臓へ入る。陰へ入るときは足少陰から腎へ注ぎ、腎から心、心から肺、肺から肝、肝から脾、脾から再び腎へ注ぐ。これを一周という。このように二十五周する。平旦に陰が尽きると陽が気を受け、再び陽経へ出る。……衛気が陰へ入れば眠り、陽へ出れば目覚める。一日百刻、全身を五十周する。これが衛気の度である。『難経』で営衛が相随うというのは、営が脈中を行き、衛が脈外を行って相い伴うという意味で、同じ一経を並んで走るという意味ではない。」